Mar 23, 2010

北山修の講演に行ってみた

先日、九州大学の人間環境学部教授である北山修の講演に行った。
精神科医でありながら、学生時代から「フォーク・クルセダーズ」の一員として数々の名曲を作詞したミュージシャンでもある。
彼は19年間九州大学に籍を置き、今年度をもって退職するため、その記念講演があったのだ。

そこで聞いたことをメモ。
___________________________

彼の行動は、一見矛盾していると語る。
精神科医でありながら、ミュージシャンとして活動するのは、患者さんの心を診察する一方で自分の葛藤を外に放っていることが矛盾している。
だが、精神科にとって、ユーモアのない治療はありえない。そのユーモアの創出は、クリエイティビティの創出である。彼にとって、音楽を通じて表現することは健康を保つことだと述べる。フロイトの抑圧理論しかり、ユーモアを創り出すクリエイティビティは衝動のコントロールである。衝動を違った形で表現するのが彼にとっては歌だった。
たとえば・・・
学校のはやり歌。「せーんせいにー言ってやろー♫」って歌が小学校ではやっていたはず。でも、よく考えると、チクッた人は、この歌を歌わないでこっそり先生に言った人じゃないか。歌った人はチクらない。

そんなイメージでの音楽活動。彼の若かりし頃は、衝動の代弁は音楽が担っていた。しかし、今はあまりそのような歌は聞かない。若者が今、衝動の代弁者として選択しているのは何なのか。
彼は、それが今は「お笑い」にあるんじゃないかと述べた。
お笑いは、シニカルなネタを言葉巧みに笑いに変える。そんなお笑いは、悪口を直接言わずにユーモアを含めてやってのける。それが、若者のフラストレーションを還元している役割を果たしているのではないかと述べる。

最後に、彼の一番大事にしていることを述べた。
それは、自分自身の分析が一番大事だということ。精神科医としての第一歩も、まずは自分の中から症例をさぐる。何事にも、自分の中に偏見や、盲点が顕在していると、それが欠点となり、視野を根本から狭くしてしまう要因になるはず。自分にまず問う、これが大事だ。

__________________________

ちなみに、加藤和彦との出会いは音楽雑誌の「バンドメンバー募集」の掲示だったそうだ。

なんか、聞いてて「この人は自分と常に戦って、苦しんでいるんだけど、その素振りを一つも表に見せない人なんだな~」と思った。ヘンだけど、そこがユーモアであって、芯があるんだなと思った。

No comments:

Post a Comment