Mar 29, 2010

レビュー:水俣訴訟 和解へ
今日の朝日新聞の一面等に記載された、水俣訴訟の記事のまとめ。

「水俣病訴訟 和解へ」
原告団体「不知火会」が28日、熊本地裁が提示した和解案を受け入れることに決めた。29日に和解協議が行われる。

水俣病は「公害の原点」と位置づけられる。1956年に水俣市保健所が、工場排水による不知火海の汚染を確認し、68年に公害と国が認定した。今回まで、原告との和解決着が行われなかった理由は、77年に国が示した患者の認定基準が発端だった。

この基準は、水俣病の代表的な症状である感覚障害や視覚障害などが「二つ以上組み合わさっている」患者であることが条件だった。また、認定するには、69年1月以前に生まれ、水俣市か鹿児島県出水市の一部出身者であることが条件などの「線引き」があった。現在、不知火海沿岸に暮らす人は約41万人、認定があった68年以前に生まれた人は約26万人。民間医が昨年9月に同地域で検診を行うと、90%を超える人たちが、水俣病かその疑いがあると診断された。

多くの水俣病患者がいる中、数々の被害者団体が設立され、今回の話に出ている不知火会は2005年に設立された。不知火会原告団団長の大石利生さん(69)は、97年に医師から「水俣病」と診断された時に、「私は水俣病ではない」と医師に食ってかかったそうだ。04年に、77年よりも穏やかな判断基準で原告を再度救済したのが新たな「水俣訴訟」の転換期となり、それがきっかけで彼は患者認定申請を行い、不知火会を結成した。自らの体験からも、「自分が水俣病と気付かない人や、まだ名乗りをあげられない人」がいると語る。

今回の和解により、原告である不知火会の中でも、69年11月までに生まれた、前述の対象地域から広げた一部の出身者に対して、一時金として210万円、療養手当を月1万7700~1万2900円、さらに不知火会に対して団体加算金として29億5000万円が支払われるという内容が提示される。一時金と団体加算金は原因企業のチッソが、療養手当は国と熊本、鹿児島県が負担する。

和解に応じる理由は、原告団が高齢化したのもある。救済の基準が穏やかになったのを受け、今回の救済が成立しそうだが、認定の基準によっては、救済されない「潜在患者」の多数存在する。不知火会(2123人)、出水の会(3900人)、芦北の会(300人)、獅子島の会(80人)、互助の会(170人)など、上記患者会を足しても7000人に満たない。医師によると、水俣病患者は10万単位で存在するとのコメントもあるほどだ。今回の和解で決着するものでもないようだ。

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公害病にまつわる訴訟が今でも続いている。今回も発生から数えて約54年。半世紀を越えて戦い続けている。
生きるための執念というか、「生」の闘争をする人びとの営みは、今回のような事柄ではなくても身近に顕在している。それを伝えるのが報道だと思うし、伝えることを続ける原動力だと思った。

(参考:2010年3月29日の朝日新聞日刊の記事より)
(写真:2010年3月29日の読売新聞よりhttp://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20100329-OYS1T00297.htm

Mar 23, 2010

北山修の講演に行ってみた

先日、九州大学の人間環境学部教授である北山修の講演に行った。
精神科医でありながら、学生時代から「フォーク・クルセダーズ」の一員として数々の名曲を作詞したミュージシャンでもある。
彼は19年間九州大学に籍を置き、今年度をもって退職するため、その記念講演があったのだ。

そこで聞いたことをメモ。
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彼の行動は、一見矛盾していると語る。
精神科医でありながら、ミュージシャンとして活動するのは、患者さんの心を診察する一方で自分の葛藤を外に放っていることが矛盾している。
だが、精神科にとって、ユーモアのない治療はありえない。そのユーモアの創出は、クリエイティビティの創出である。彼にとって、音楽を通じて表現することは健康を保つことだと述べる。フロイトの抑圧理論しかり、ユーモアを創り出すクリエイティビティは衝動のコントロールである。衝動を違った形で表現するのが彼にとっては歌だった。
たとえば・・・
学校のはやり歌。「せーんせいにー言ってやろー♫」って歌が小学校ではやっていたはず。でも、よく考えると、チクッた人は、この歌を歌わないでこっそり先生に言った人じゃないか。歌った人はチクらない。

そんなイメージでの音楽活動。彼の若かりし頃は、衝動の代弁は音楽が担っていた。しかし、今はあまりそのような歌は聞かない。若者が今、衝動の代弁者として選択しているのは何なのか。
彼は、それが今は「お笑い」にあるんじゃないかと述べた。
お笑いは、シニカルなネタを言葉巧みに笑いに変える。そんなお笑いは、悪口を直接言わずにユーモアを含めてやってのける。それが、若者のフラストレーションを還元している役割を果たしているのではないかと述べる。

最後に、彼の一番大事にしていることを述べた。
それは、自分自身の分析が一番大事だということ。精神科医としての第一歩も、まずは自分の中から症例をさぐる。何事にも、自分の中に偏見や、盲点が顕在していると、それが欠点となり、視野を根本から狭くしてしまう要因になるはず。自分にまず問う、これが大事だ。

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ちなみに、加藤和彦との出会いは音楽雑誌の「バンドメンバー募集」の掲示だったそうだ。

なんか、聞いてて「この人は自分と常に戦って、苦しんでいるんだけど、その素振りを一つも表に見せない人なんだな~」と思った。ヘンだけど、そこがユーモアであって、芯があるんだなと思った。

Mar 5, 2010

すげえ!